熱感知器の種類(差動、定温)と仕組みと誤作動

解説

今回は自動火災報知設備の熱感知器についてです。火災感知器は皆さんのマンションやオフィスにもあるのではないでしょうか。

誤作動したらどうしよう?と思っていませんか?

今回は熱感知器の仕組みを学ぶ事で、誤作動を減らしてもらう為の記事です。

この記事を読むことで

➡熱感知器の種類

➡熱感知器の仕組み

➡熱感知器の誤作動の原因と対処法

➡熱感知器の使い分け

について学ぶことが出来ます。

それでは熱感知器の説明です。


熱感知器の種類と仕組み

熱感知器は大きく分けて2種類あります。

差動式(さどうしき)感知器と定温式(ていおんしき)感知器です。

少し難しい言葉ですね。なるべく専門用語を使わずに図や写真も用いて解説しますので最後までご覧ください。

差動式感知器の仕組み

まずは差動式感知器の写真から

こちらが差動式です。ドーム状の形をしていますね。

この感知器の1番分かりやすい説明は、温度差感知器です。

温度 ”” で ”” く感知器はドーム状と覚えて下さい。

急激な温度変化を感知します。仕組みはというと、このドーム状の感知器の内部で熱による空気の膨張を利用し火災を感知します。

空気は熱により膨張します。コンビニでブリトーを温める時、少し切り込みを入れますね?切り込みを入れないと袋がパンッ!と破裂してしまいます。

あれと同じように、急な温度上昇によりドームの内部の空気が膨張するのです。

では真夏に反応しちゃわないの?と思うかもしれませんが、緩やかな温度上昇の場合は膨張した空気を逃し穴から逃す事で誤作動を防いでいます。

急激な温度上昇に対しては膨張した空気を逃しきれずに反応します。

それでは差動式感知器の図をご覧ください。

通常時(火災ではない時)は感知器はこのような状態です。

火災時に感知器が熱せられると↓

赤い部分の接点(プラスとマイナス)が付き、電気信号として火災受信機へと信号を送ります。

先ほど述べた、緩やかな温度上昇の時は右上のリーク孔という部分から膨張した空気を逃がします。この為真夏で温度が高くなっても誤作動はしません。


定温式感知器の仕組み

まずは定温式感知器の写真から

なにやら感知器に金属がついてますね。

この感知器の1番分かりやすい説明は一定の温度になると反応する感知器です。

一 ”” の ”” 度で動く感知器は鉄板付きと覚えて下さい。

この金属が熱により変形することで作動します。

それでは図をご覧ください。

先ほどの感知器同様、プラスとマイナスがありますね。

この感知器が熱せられると

青い部分の金属は低膨張金属であまり膨張しませんが、赤い部分の金属は膨張します。これによりプラスとマイナスが付くことにより火災受信機へ火災信号を送ります。


熱感知器誤作動の原因

ここまで感知器の仕組みを学んでいただいたら誤作動の原因がスッと理解いただけるかとおもいます。

それではまず差動式感知器の誤作動の原因について解説します。

差動式感知器の誤作動

差動式感知器は温度差で反応する感知器だと述べました。具体的にどんな時に誤作動が発生するのか。

多い例として次の3点あります。


・真冬に差動式感知器の下で鍋を火にかける

→差動式感知器は温度差で反応します。この感知器の真下で鍋に火をつけたとすると、ぐつぐつと沸騰した時に蒸気が発生します。

この蒸気により感知器が熱せられ誤作動を起こしてしまうのです。

対処法

→差動式感知器の下で鍋に火をかけない

→温度差が原因なのでエアコンで室内を温めてから鍋に火をつける


・差動式感知器に物をぶつけた

→差動式感知器はドーム状になっています。物をぶつけてしまった事でこのドーム状の部分の空気がプラスとマイナスをくっつけてしまう事により誤作動を起こします。

もちろん、ぶつけた凹みによってプラスとマイナスが直接くっつくことも。

こちらはいうまでもありませんが、物をぶつけないように注意することで誤作動を減らせます。


・感知器の裏で湿気や漏水

→感知器の裏の湿気によりプラスとマイナスがくっついてしまう事で誤作動を起こします。

対処法

こちらは中々対処法がないのも事実です。湿気がひどい場合には消防署と相談の上、感知器を防水型に替えるなどの処置があります。


定温式感知器の誤作動

定温式感知器は一定の温度で反応する感知器だと先ほど述べました。

こちらの感知器は誤作動の原因の多くは物をぶつけたことによる金属部分の変形が原因です。差動式感知器はほんの数秒の温度差を感知してしまいますが、定温式反応温度が一般的に60~70℃なので差動式よりは誤作動に強いといえます。

じゃあうちのビル誤作動が多いから熱感知器は全部定温式が良い!という気持ちは分かりますが

熱感知器はどのように使い分けられるのでしょうか。

次で解説します。


熱感知器の使い分け

ここまで読んでくださったらかなり熱感知器の見識も深まったのではないでしょうか。

全部定温で良いじゃん!の気持ちがよく分かります。

しかしそれには理由があります。

では差動式感知器と定温式感知器はどのような場所に設置されるのでしょうか。

次章で解説します。

定温式感知器の設置場所

定温式感知器の設置場所

・キッチン

・脱衣所

・押入れ

です。

理由はキッチンや脱衣所は湯気や蒸気による急激な温度変化がある為です。この場所に差動式感知器を設置したら誤作動を起こしてしまいます。

また、押入れに設置する理由は布団から出火した事例に対応する為に設置されます。

押入には以前までは差動式が設けられていました。この火災が原因で押入は定温式を設置する事となりました。

布団の火災の原因は寝タバコの火種が布団に残ったまま押入れにしまった事や、押入れ内のダウンライトの熱による発火によるものでした。

これらの火災は温度上昇が緩やかであった為、差動式では感知しにくかったという事です。

差動式感知器の設置場所

設置される場所は定温式、煙感知器が設置される場所以外です。

定温式に比べ少々雑になってしまいますが、この説明が一番簡潔に説明出来ます。

例を挙げる

・リビングや寝室などの居室

・喫煙室

です。例えば居室に定温式を設置すると差動式に比べ感知器作動までに要する時間が長い為、火災の報知が遅れてしまいます。

だったら煙式感知器でいいのでは?と思われるかもしれませんが、居室内や喫煙室ではタバコの煙に反応してしまったり、鍋料理の湯気で反応してしまったりと、これまた誤作動が増える為です。

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